登山家・野口健氏が警鐘「今の五輪強行ムードは登山なら完全に遭難するパターン」
■取ってつけた「復興」だったのか
僕自身、オリンピックそのものには反対ではありません。以前、石原慎太郎さんが都知事の時代に招致運動に参加して、「東京オリンピック招致大使」も務めた。参加した理由は、慎太郎さんの目的が「東京を自然豊かな街にしたい」というものだったから。街路樹を100万本に増やす、都内の公立学校の校庭を全部芝生にする、夢の島に明治神宮のような森を作るなど、コンクリートジャングルのイメージが強い東京を、環境に配慮した街にするというのがテーマだった。それは面白いなと思ったんです。
しかし、今回のテーマは震災からの復興と言いながら、開催の中心は東北ではなく東京。スタートラインから何のための五輪なのか、正直ピンときていなかった。「復興」というワードを持ってくることで、選考が通りやすいと考えたのかなと思いました。海外に認めてもらうための、取ってつけた「復興」だったのかなと。その後、コロナ禍になって明確に疑問を感じるようになりました。
僕は親父からの洗脳教育で「世の中にはA面とB面がある。見るべきは(努力しなければ見えてこない)B面」と言われてきましたが、今回、多くの人が五輪のB面を見た。IOCがいかに高飛車で、「菅首相が中止を求めても個人的な意見に過ぎない。大会は開催される」と言う姿勢です。