著者のコラム一覧
松崎菊也戯作者

53年3月9日、大分県別府市生まれ。日大芸術学部放送学科卒業後は宇野重吉らが率いる「劇団民藝」に所属。その後はコントグループ「キモサベ社中」「キャラバン」を経て、88年にコントグループ「ニュースペーパー」を結成。リーダー兼脚本家として活躍した。98、99年にはTBSラジオ「松崎菊也のいかがなものか!」でパーソナリティーを務めた。現在も風刺エッセイや一人芝居を中心に活躍中。

「まだ早いので」と辞退 大谷翔平に見る国民栄誉賞の巧妙な断り方

公開日: 更新日:

 大谷翔平が国民栄誉賞を辞退した。

 国民栄誉賞とは、「時の人に対して国民が授ける栄誉の賞」ということか? どこのどいつが名付けたか知らんが、余計なお世話もはなはだしい。国民を軽々しく使ってもらっちゃ困る。「政権人気V字回復祈念賞」が正しい。新語・流行語大賞「ショータイム」受賞の副賞付き。何を今さら。ケッ!

 国民と名付けるなら、国民の総意に基づく必要がある。国民の代理を任された立法府、国会で決議せよ。全会一致で可決したのであれば「恐れ多いことながら」襟を正して受けもするだろう。

 過去のプロ野球選手で、メジャーリーグ挑戦への道を切り開いた野茂英雄には、なぜ授与しないのだ? それはね……、日本プロ野球を裏切ったやつにやるなんざとんでもない、という裏の力が動いたに違いないとオレは思っている。

 松井秀喜がなぜ受けたのか? それはね……、親会社と親しい時の政権の強引さに押し切られ、師匠である長嶋茂雄の介添えを兼ねて、ま、師匠が喜ばれるならお受けしますと、松井らしい誠実さで受けたに違いないとオレは思っている。

3度拒否したイチロー

 イチローが小泉政権から2度受賞を打診されたが、

「引退した時にいただけるように頑張りたい」

 それでは、と現役引退した時に安倍政権から打診されたら、

「人生の終わりにいただけるよう励みます」

 完全に時の政権のほうがおちょくられている。

 大谷は「まだ早いので辞退させていただきます」と言った。

 お上が授ける賞を断るとはなんたる無礼者! と本気で怒るやつらも、政府の人気取りに利用されるなヨ、と思っている(オレのような)やつも、「まだ早いので」という理由ならどちらも怒らない。実にうまい。

 岩本勉よ、野球評論ではなく芸人として笑いを取りたいなら「国民栄誉賞とは名ばかり、権力の人気取りのために利用される賞を受けることで生じる微妙な立ち位置のブレをヒョイとすり抜ける大谷翔平に拍手!」とやれば滑るまい。

「まだ早いので辞退させていただきます」の前文をつまびらかにしておく。

選挙に勝ったとはいえまだ何もしてないくせに、てめえの支持率を維持するために人の稼いだ点数まで自分に加点しようとするなんて、あんたにはまだ早いので辞退させていただきます」

 おわかりいただけましたでしょうか岸田総理? 

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    大谷の今季投手復帰に暗雲か…ドジャース指揮官が本音ポロリ「我々は彼がDHしかできなくてもいい球団」

  2. 2

    センバツVで復活!「横浜高校ブランド」の正体 指導体制は「大阪桐蔭以上」と関係者

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希の肩肘悪化いよいよ加速…2試合連続KOで米メディア一転酷評、球速6キロ減の裏側

  4. 4

    PL学園から青学大へのスポ薦「まさかの不合格」の裏に井口資仁の存在…入学できると信じていたが

  5. 5

    阪神・佐藤輝明「打順降格・スタメン落ち」のXデー…藤川監督は「チャンスを与えても見切りが早い」

  1. 6

    ソフトB近藤健介離脱で迫られる「取扱注意」ベテラン2人の起用法…小久保監督は若手育成「撤回宣言」

  2. 7

    巨人・坂本勇人2.4億円申告漏れ「けつあな確定申告」トレンド入り…醜聞連発でいよいよ監督手形に致命傷

  3. 8

    「負けろ」と願った自分を恥じたほどチームは “打倒キューバ” で一丸、完全燃焼できた

  4. 9

    巨人・坂本勇人は「最悪の状態」…他球団からも心配される深刻打撃不振の哀れ

  5. 10

    佐々木朗希よ…せめてあと1年、吉井監督の下で準備期間を過ごせなかったのか。メジャーはそんなに甘くない

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    大河ドラマ「べらぼう」の制作現場に密着したNHK「100カメ」の舞台裏

  1. 6

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  2. 7

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  3. 8

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  4. 9

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  5. 10

    トランプ関税への無策に「本気の姿勢を見せろ!」高市早苗氏が石破政権に“啖呵”を切った裏事情