六川亨
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六川亨サッカージャーナリスト

1957年、東京都板橋区出まれ。法政大卒。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年にサカダイを離れ、CALCIO2002の編集長を兼務しながら浦和レッズマガジンなど数誌を創刊。W杯、EURO、南米選手権、五輪などを精力的に取材。10年3月にフリーのサッカージャーナリストに。携帯サイト「超ワールドサッカー」でメルマガやコラムを長年執筆。主な著書に「Jリーグ・レジェンド」シリーズ、「Jリーグ・スーパーゴールズ」、「サッカー戦術ルネッサンス」、「ストライカー特別講座」(東邦出版)など。

U-23日本代表のパリ五輪最終予選に「3つの不安材料」…六川亨氏がシビアに検証

公開日: 更新日:

GK鈴木ら相次ぐ主力の招集外

 山本NTDはアトランタ五輪(西野朗監督=18年ロシアW杯監督)、00年シドニー五輪(トルシエ監督)の代表コーチとして予選突破に尽力。02年の日韓W杯ではトルシエ監督をコーチとして補佐し、日本サッカー初のベスト16入りに貢献した。

 W杯後に五輪代表監督に就任。04年アテネ五輪予選では、UAE開催分の予選でスタッフ、選手全員が細菌性腸炎に苦しめられるなど苦労を重ねながら、3大会連続で五輪本大会出場を決めた。 五輪のアジア予選を突破することの難しさを身をもって経験してきた山本NTDだからこそ、「危機感しかありません」という言葉がズシリと重みを帯びる。

 懸念材料はまず「海外組の招集が難しい」ことが挙げられる。山本NTDはこう話していた。

「鈴木(唯人=ブレンビー)と久保(建英=レアル・ソシエダ)は(本大会開催の)7月は(シーズンが)オフになるので話し合い次第。パリ五輪(出場)に前向きに話を進めているが、ハードルは高い。予選(招集)も難しい。海外のクラブは(選手を)リリースする義務はない。交渉は1年くらい前からやっている。海外オフィスも設けて現場は対応しているが、呼べない選手がいる」

 実際、鈴木も久保も予選に招集できず、この2人以外にもMF斉藤光毅(スパルタ)、FW福田師王(ボルシアMG)らが招集外となった。

 予選メンバーで海外組はGK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、DF内野貴史(デュッセルドルフ)、MF佐藤恵允(ブレーメン)、MF山本理仁、MF藤田譲瑠チマ(いずれもシントトロイデン)の5人である。この中で所属クラブのレギュラーとしてプレーしているのは藤田チマひとりだけ。

■五輪招集メンバーは「1チーム3人まで」という内規

 他の4人は出場機会をつかむのにも苦労しているのが現状。A代表と違って五輪には「拘束力」がないこともあり、チームづくりに大きな足かせとなる。

 A代表でスタメン出場を続けているGK鈴木彩艶(シントトロイデン)の五輪予選招集が話題となったが、シントトロイデンのフィンク監督(元神戸監督)はGK鈴木の参加要請を拒否。「FC東京の3人目」としてGK野沢大志ブランドンを呼ばざるを得なくなり、これが大岩監督の構想を大きく狂わせた。

 実は五輪招集メンバーは「1チーム3人まで」という内規がある。大岩監督はFC東京のバングーナガンデ佳史扶を左SBのレギュラー候補として呼びたかったはずだが、FC東京にはMF松木玖生、FW荒木遼太郎の攻撃系の当確選手がおり、GK鈴木を招集できなかったことでGK野沢ブランドンを選び、DFバングーナガンデの招集を見送るしかなくなった。苦渋の決断だったはずだが、欧州組の招集問題とJの1チーム3人ルールが、チームづくりを難しくしてしまった。

 そもそも海外組の招集を難しくしたのは、U-23アジア杯の開催場所と日時が変わったからだ。

 もともとU-23アジア杯は、1月から2月にかけて開催される予定だった。この日程ならチームによっては、選手の予選参加を前向きに検討してくれたかも知れない。

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