著者のコラム一覧
武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

マラソン日本を先導した寺沢徹さんを偲ぶ…あの「クラレ」の社名の由来となった昭和の顔

公開日: 更新日:

 マイカー時代到来で日曜に休めなくなり、倉敷レイヨン(現クラレ)に転職すると給料が下がった。給料はすべて家に入れていたから親に文句を言われたそうだ。マラソン転向は転職後で、シャツの胸に「倉敷レイヨン」と書いた。当時は繊維会社が多く、東洋レーヨンなどと紛らわしいので勝手に「クラレ」にした。現社名の由来はマラソンの寺沢徹であると書かれた社史をうれしそうに見せてくれた。

 62年に陸連のニュージーランド合宿に参加し、リディアードのトレーニングを目の当たりにし覚醒した。

 翌年の別大マラソンで当時の世界最高(2時間15分15秒8)をマーク。64年の東京五輪で惨敗すると、1カ月半後の福岡国際、その2カ月後の別大で立て続けに記録更新。30歳を理由にボストン遠征から外された65年、監督として参加したロンドンで自己ベスト(2時間13分41秒)で2位に入った。この大会でアベベの世界記録を塗り替えて優勝したのは重松森雄だった。

 別大で4度優勝。先頭を駆けた角刈り、礼装用の白い手袋がおしゃれだった。社宅があった甲子園近くに暮らして晩年まで武庫川の河川敷を走ったが、甲子園取材の折に連絡すると、開襟シャツをなびかせ自転車を走らせてきた。あの夏の姿が懐かしい。マイカー、モノクロ写真の白い手袋……昭和の顔がまた一つ消えた。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  2. 2

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  3. 3

    芸能界を去った中居正広氏と同じく白髪姿の小沢一敬…女性タレントが明かした近況

  4. 4

    中居正広氏、石橋貴明に続く“セクハラ常習者”は戦々恐々 フジテレビ問題が日本版#MeToo運動へ

  5. 5

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  1. 6

    広末涼子が逮捕以前に映画主演オファーを断っていたワケ

  2. 7

    大阪万博メディアデー参加で分かった…目立つ未完成パビリオン、職人は「えらいこっちゃ」と大慌て

  3. 8

    容姿優先、女子アナ上納、セクハラ蔓延…フジテレビはメディアではなく、まるでキャバクラ状態だった

  4. 9

    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終

  5. 10

    エンゼルス菊池雄星を悩ませる「大谷の呪い」…地元も母校も同じで現地ファンの期待のしかかる