ロッテでは心の底から野球を楽しむことができた。二軍でも少年野球を始めた頃のように汗を流した
勝てばクライマックスシリーズ(CS)進出が決まる最終戦で2安打を放ち、本塁へ派手なヘッドスライディングでチームを鼓舞した。
この年のロッテは、球史に残る「史上最大の下克上」を成し遂げた。CS制度がスタートしたのは2007年。リーグ3位から日本一という大逆転劇を演じたのは、昨季のDeNAが達成するまで、10年のロッテだけだった。
3位だから失うものはない。初めは「勝とうぜ」と言い合っていたが、だんだんとそれが「勝てるぞ」に変わっていった。あの年のロッテはまさに挑戦者だった。
西武とのCSファーストステージ初戦からシビれる展開。九回に5-5の同点に追いつくと、延長十一回に福浦和也の決勝ソロで勝ち越し。これで勢いに乗った。第2戦も延長戦を制してソフトバンクが待つ福岡へ乗り込んだ。
ファイナルステージは、第1戦に先勝した後に2連敗。アドバンテージを含めて1勝3敗と追い込まれた。しかし、ここから3連勝でCSファイナル突破というミラクルを起こす。この年のポストシーズンは、不思議な高揚感と一体感に包まれていた。阪神時代にはあまり味わったことのない選手、首脳陣、フロント、ファンが一体となった雰囲気が選手を後押ししてくれた。
日本シリーズではセ・リーグを制した落合中日を4勝2敗1分けで下し、史上初の下克上を完結させた。
阪神時代は「使命感」を感じながらプレーしていた。肩の荷が下りて、ロッテでは他の選手同様、心の底から野球を楽しむことができた。