「猫的感覚」ジョン・ブラッドショー著 羽田詩津子訳

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 人間にとって身近な存在でありながら、ミステリアスな側面を持っている「猫」。感情をあらわにせず、人に忠誠心を見せない気まぐれな動物は、何を感じ、何を考えて行動しているのか。本書は、英国の動物学者である著者が、人と共存するようになった猫の心理と未来を解き明かした一冊だ。

 人との出合いは今から1万年前。穀物を狙うネズミの駆除役を期待されてのことだ。古代エジプトではペットとして扱われたが、中世ヨーロッパでは教会が猫を敵対視した歴史もあった。今や、ネズミ狩りも爪とぎも嫌われ、運が悪ければ飼い主の都合で気の合わない去勢猫同士が狭い縄張り内で同居する羽目にも陥る。実験によれば生後3週間までの育て方でどんな猫になるかは決まってしまうという。ペットとして去勢され子孫を残せない猫と、人間を信用しない野生の猫に分化した結果、今後最も繁殖するのは人間に慣れない野生の猫だという著者の指摘には考えさせられる。

(早川書房 2200円+税)

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