「絶唱」湊かなえ著

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 阪神淡路大震災から20年目の節目に当たる今年の1月17日に発行された短編連作集。

 双子の片割れを震災で失った若い女性を描いた「楽園」、婚約者への違和感を胸に国際ボランティア隊に参加した理恵子の物語「約束」、震災で父を亡くした経験から大学時代にできた子の命を消せずにシングルマザーになった杏子を描いた「太陽」、国際ボランティア隊で出向いたトンガで出会った恩人に向けて手紙を書く千晴の物語「絶唱」の4編が収録されている。

 太平洋に浮かぶトンガに引き寄せられるようにたどり着いた4人の女性は、みな震災経験からくる喪失感や後悔を胸に秘め、それでも生きていくための再生を試みる。表題作「絶唱」では、4話全体の種明かしがされる。

 震災後20年という月日を経たからこそ、語ることのできる震災経験者の心模様が繊細に描かれているだけでなく、著者自身の経験が投影された実話のようなリアリティーを持っている点も興味深い。

(新潮社 1400円+税)

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