コンピューターがプロ棋士に完勝する日はいつか
「ドキュメント コンピュータ将棋」松本博文著
プロ棋士5人とコンピューター将棋ソフト5種が戦う「将棋電王戦FINAL」第5局が4月11日に開催され、阿久津主税八段がソフト「AWAKE」に勝利。対戦成績は3勝2敗という結果となり、プロ棋士側の勝ち越しで幕を閉じた。
しかし、2013年からの電王戦では、過去2年プロ棋士が負け越していた。松本博文著「ドキュメント コンピュータ将棋」(KADOKAWA 800円+税)では、プロ棋士を追いつめてきたコンピューター将棋の歴史やソフト開発者の横顔などについてルポしている。
コンピューターに将棋をさせようという試みが始まったのは1974年のこと。幕末の棋聖・天野宗歩の指し方を現代によみがえらせるという、NECのプロジェクトの一環だった。当時早稲田大学の大学院生だった、現コンピュータ将棋協会会長の瀧澤武信らが手掛けたものだったが、できあがったプログラムは“ルール通りに動く”という程度のもので、コンピューターが人間に勝つことなど、夢物語だった。
コンピューター将棋界で大きなブレークスルーが起きたのは、物理化学者である保木邦仁が「Bonanza」を開発した05年だろう。保木自身は将棋に関しては初心者レベルだったが、勝つための判断基準(評価関数)を人間が教えるのではなく、棋譜を教材としてコンピューター自身に学習させ、自動的に評価関数を作る機械学習の手法を採用。さらに、ハードの性能向上によって可能となった、手を広く読む全幅検索も取り入れた。