「骨が語る日本人の歴史」片山一道氏
一般的な「弥生人顔」というイメージは、単に弥生時代の一部の地域の人々の顔立ちにすぎなかったわけだ。そもそも、なぜ人々にこのような思い込みが広まったのか。
「中学・高校の教科書や日本史の資料集などで『縄文系』『弥生系』という二分論が流布されてきたことが背景にあります。ある考古学の博物館では、北部九州の福岡平野や佐賀平野の弥生時代遺跡や、山口県・土井ケ浜遺跡などで出土した人骨を例にして、縄文時代の岡山県・津雲貝塚で出た人骨からの復顔像と並べて、『縄文人と弥生人はまるで違った』と比較しているほどです。現在、学者たちの間で議論の最中ですが、そのうち教科書も変わるでしょう」
旧来の歴史学の定説の間違えを骨考古学の科学的視点から検証した話題の本だ。
(筑摩書房 820円+税)
▽かたやま・かずみち 1945年、広島県生まれ。京都大学卒。現在、京都大学名誉教授。先史人類学・骨考古学。著書に「古人骨は語る」「骨考古学と身体史観」などがある。