「華人歌星伝説 テレサ・テンが見た夢」平野久美子著
出身地の台湾をはじめ、東南アジア各国で再顕彰が進む、1995年に急逝した歌手テレサ・テンこと鄧麗君(デン・リーチェン)の評伝。
鄧麗君は日本人の想像をはるかに超えたレベルで、世界中の華人社会で今でも巨星としてあがめられているという。大陸出身の外省人を両親に持ち、14歳でデビューするとまたたくまにスターとなった。一方で戦後の中華民国体制のもと、新しい国語となった中国語歌謡を歌うことによって頂点を極めた彼女は、国民党政府の宣伝工作の一翼を担い、「歌う公務員」と呼ばれていたという。台湾、日本、香港、中国、パリと彼女の足跡をたどり、多くの関係者の証言から人間鄧麗君の素顔に迫る。
(筑摩書房 1000円+税)