知性主義の回復の芽を感じる希望の書
「官僚階級論」佐藤優著
書店をのぞけば必ず並んでいる佐藤優氏の新刊。私は「政治と宗教について大切なことはすべて佐藤優から教わった」と言ってよいほどの佐藤マニアであるが(笑い)、とてもすべては読みきれない。そんな私と同じ心境の人におすすめしたいのが、「官僚階級論」である。本書は「官僚とは何か、いつ成立したか」という官僚論の体裁を取っているが、そこには国家、キリスト教、マルクス主義、そして沖縄といった佐藤思想のエッセンスがぎゅっと詰まっている。他の著作同様、さまざまな人名、書名が登場してめまいがしそうになるが、語り口調はやさしく脚注も親切だ。興味のあるパートから拾い読みしてもよいだろう。
さて、本書の読み方はさておき、肝心の官僚論についても少し触れておこう。著者の考えは明確で、マルクスは社会から「資本家・地主・労働者」の3つの階級が生まれるというモデルを考えたが、その外にある「国家」まで視野に入れると、4つ目の階級として「官僚」が必然的に出現することになる。つまり、「官僚」は職業でも立場でもなく、階級だというのが著者の主張の要だ。そう考えると、国家存続のためにその実体を担う官僚が暴走したり、国民に強権を行使したりするのも当然といえる。それは官僚それぞれの人がらなどとは関係ないことなのだ。