いま国民は核心を突く人を欲していないのか

公開日: 更新日:

「ジャーナリストという仕事」斎藤貴男著(岩波ジュニア新書)

 本書は、もともと若者に向けて、ジャーナリストという仕事を紹介するために書かれたものだ。だが、私は、この本を広く国民に読んで欲しいと思う。それは、本書で著者が、ジャーナリズムとは何かという問題に、真正面から取り組んでいること。そして、もう一つは、そのジャーナリズムが、いま存亡の危機に立たされているという現実を知って欲しいからだ。

 多くの国民が、ジャーナリズムの危機自体を認識していない。例えば、ヤフーニュースの意識調査で、高市総務大臣が、政治的な公平性を欠く放送を繰り返した放送局に対して電波停止を命じる可能性に言及したことに関して、「メディアの萎縮をもたらす」と考えるかを聞いたところ、半分近い国民が「萎縮はない」と答えているのだ。私は萎縮どころか、服従に近い現実があると思うのだが、本書では、そうした状況も具体的事例に基づいて説明している。

 著者は、自身をジャーナリストのはしくれと謙遜しているが、私は日本のトップクラスのジャーナリストだと思う。膨大な資料を読み込み、当事者にインタビューし、深く考えて、問題の本質に切り込む。しかも、ジャーナリストの本領は権力のチェックだと確信しているから、権力に対して一切の妥協を許さない。権力者と酒食を共にし、そこで得た情報を垂れ流しにする大手メディアの記者とは、決定的にスタンスが違うのだ。だから、私はこれまで著者の発する情報を、確かなものとして受け取ってきた。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    大河ドラマ「べらぼう」の制作現場に密着したNHK「100カメ」の舞台裏

  1. 6

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  2. 7

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  3. 8

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  4. 9

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  5. 10

    トランプ関税への無策に「本気の姿勢を見せろ!」高市早苗氏が石破政権に“啖呵”を切った裏事情