永田町にいるすべての男たちに読んでもらいたい
「つながる セックスが愛に変わるために」代々木忠著
これはベテランAV監督の書いたセックスの指南書か? タイトルや表紙からはそう見えるかもしれない。しかし、本書の核心はそこにあるわけではない。無数のAVの撮影や心にトラウマを抱えた女優たちとのかかわりを通して、著者は「芯を持った人間になれ」「何ごととも真剣に向き合え」という普遍的な人生観に行き着く。その思考の過程がつぶさにかつ興味深く書かれた人生の本、それが本書である。
著者は、「愛し合える女性に巡り合えない」と風俗通いを続けたり、AVの撮影現場でさえ自分がどう見えているかを気にして目の前の女性に向き合えない男性たちにとくに厳しい。「かくあるべき」という固定観念に縛られ「社会の歯車」として従順に働くようになった彼らに「国策の犠牲者」と同情を寄せながらも、「進化した女性が男性を引っ張り上げるしかない」とややあきらめ気味でもある。
あなたは、AV監督や女優たちに「頭でっかち」「男の勘違い」「他力依存」と揶揄され、悔しくはないだろうか。もし、少しでもそれに反発したいのなら、まずは身近にいる妻やパートナーに「相手を愛おしみ慈しむ思い」を真剣に伝えてほしい。何もそれはセックスとは限らず、言葉でも日常の態度でもいいのだ。
ひとりの人間と本気で向き合えない男は、仕事とも社会とも本当の意味ではつながれない。いまは「ヘタを打つより様子を見たい」と言っていられる時代ではない。すべての人が本気を出さないと、この国はたいへんなことになってしまう。そのためにもまず身近な人から目をそむけずに、しっかりとつながってほしい。私は、永田町にいるすべての男たちにぜひ本書を読んでもらいたいと願っている。(新潮社 550円+税)