「奔走老人」谷川洋著
定年まであと5年というところで妻を亡くした著者は、今後の人生を考えた。3人の息子も巣立ち、妻も亡くなり、ひとりになったときに何をすべきか。ありきたりのプランしか思い浮かばないまま、定年まであと2カ月となったある日、アジアの辺境地の学校づくりの話が舞い込んできた。本書は、60歳からアジアの奥地に飛び込んで220校以上の学校をつくった男の汗と涙のドキュメンタリーだ。
学校をつくる国際支援が、「校舎をつくったらおしまい」で、その後廃校になってしまうケースが少なくないことを聞いた著者は、「現地に学校を建設する」「建設には親や住民が参加する」「現地の学校と日本の学校が協定を結んで国際交流を行う」の3点を必須条件にスタート。ラオス、ベトナム、タイ、中国、スリランカなどの僻地に足を運び、住民と話し合いながら学校づくりに奔走する。必要とされない人生の始まりだと思っていたという定年から、全力疾走が始まった著者の奮闘ぶりが凄い。(ポプラ社 1500円+税)