「マフィア帝国ハバナの夜」T・J・イングリッシュ著、伊藤孝訳
米国との国交回復で注目を浴びるキューバの歴史をひもとけば、独裁政権下で勢力を伸ばしたマフィアの暗躍があった。本書は、キューバ革命の裏側で首都ハバナを舞台に繰り広げられたマフィアの興亡史だ。
1940年代後半から50年代、マフィア界の頭脳派と呼ばれたマイヤー・ランスキーとシチリア系マフィアの最高実力者であるチャールズ・ルチアーノがハバナにやってきた。華やかなカジノホテルやナイトクラブの経営を足掛かりに、彼らが目指したのは、犯罪国家の創立。バティスタ独裁政権と手を組み、犯罪から得た利益を「合法的」に政府の傘の下に隠して、キューバをむさぼりつくそうとしたのだ。
しかし、この時期キューバ南東部ではフィデル・カストロ・ルスが率いる革命運動の物語も始まっていた。シナトラやケネディをも取り込み、バティスタ政権に巣くったマフィアと、革命に邁進するカストロとの攻防は、今の日本にも示唆に富む史実を残している。(さくら舎 1800円+税)