「犬死伝」小嵐九八郎著
主人公は、江戸赤坂に住む小島四郎左衛門将満。郷士にして大地主の小島兵馬の三男として生まれたが、長兄は亡くなり、次兄は旗本にもらわれたため、跡取りとして育てられた。
農村の生活を知る四郎は、自らの娘でさえ生活の厳しさのために身売りに出さなければならない農民の生活の苦しさを知っていたため、「年貢半減」と「倒幕」という夢を抱くようになり、「青雲隊」を結成。後の西郷隆盛である薩摩藩の西郷吉之助との出会いを経て、相楽総三と名乗るようになり、幕府に揺さぶりをかけるべく強盗や放火に及んだ。しかし、そうした志と反するかのように、いつしか薩摩に裏切られ「偽官軍」と呼ばれて追われる身となっていく。
幕末期、相楽総三が率いる青雲隊が赤報隊となっていく過程や、その後の歴史をもとに描かれたフィクション。世直ししたい一心で理想に燃えて突き進む青年の目を通して、混乱極まった江戸で起きた駆け引きと悲劇を追う。(講談社 1900円+税)