「希望荘」宮部みゆき著

公開日: 更新日:

 妻の不倫が理由で離婚し、義父が経営していた会社も辞めて、家庭も仕事も失った杉村三郎は、東京都北区の借家に小さな探偵事務所を開いた。調査会社の調査員をやりつつ、自分でも思いがけず開業した探偵業だったが、ついにご近所のご婦人が独立開業後の依頼人第1号として飛び込んでくる。

 最近死んだはずの人とそっくりな人を別の町で見かけて仰天し、調べてほしいというのだ。さっそく杉村は死んだという老女の人間関係を調べ、目撃情報があった場所に出向く。そこで見えてきた事の真相とは……。

「誰か Somebody」「名もなき毒」「ペテロの葬列」に続く杉村三郎シリーズ。杉村役を小泉孝太郎が演じたTVドラマも人気となり、ファンにとって本書は待望の第4弾だ。収録されているのは、表題作「希望荘」をはじめ、「聖域」「砂男」「二重身」の4作。前作からさまざまな事件に巻き込まれた結果、運命に導かれるようにして探偵業に足を踏み入れたその顛末は同情を誘う。ひとりぼっちで無職の境遇になった主人公・杉村だからこそ気づく依頼人たちの繊細な心模様も、丁寧に描かれている。(小学館 1750円+税)


【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる