この変わり身は何なのか 20年前の選挙では痛烈な池田大作批判
「総理の影 菅義偉の正体」森功著 小学館 1400円+税
先日亡くなった自民党の元幹事長、加藤紘一は自民党と公明党の連立に反対して、こう言った。
「熾烈な宗教政党批判を繰り広げた自民党が公明党と連立するとは、あまりにもご都合主義ではないか」
“ご都合主義”を絵に描いたような政治家が現内閣官房長官、菅義偉だろう。
今からちょうど20年前の1996年の衆議院選挙で神奈川2区から初当選した菅は、相手が創価学会の青年部長だった新進党(現公明党)公認の上田晃弘だったこともあって、激しい創価学会批判を展開した。池田大作(創価学会名誉会長)を“人間の仮面をかぶった狼”と書いたビラまで配布したのである。
菅の秘書を長く務めた渋谷健がこの本の中で、こう証言している。
「われわれも学会批判をめちゃくちゃにやったし、向こうも真剣勝負でした。たとえば、とつぜん宣伝カーの前に、二~三人が立ちはだかって道をふさいだり。ひどいときは道路に寝転んだり。ある夜、事務所の玄関にバーンと大きな音がするので行って見ると、大きな石が投げ込まれ、車が走り去っていった。僕の家に夜中じゅうファックスを送りつけてきたこともありました」
しかし、それからわずか3年後に自民党と公明党が手を組んだこともあって、2000年の選挙では菅は創価学会に協力を求める。
一度挨拶に来いと言われ、菅は渋谷と2人で学会の神奈川県本部に行った。
「菅さん、あんたこないだの選挙で、池田大作先生のことをなんて言った? あんなに批判しておいて気持ちは変わったのか」
地域のトップにこう詰られ、1時間ほど、菅は言い訳に懸命だったという。
「おい渋谷、最初はほんとに怖かったな」
と菅はのちに笑ったらしいが、この大変身(心変わり)は学会トップでなくても、追及したいところである。ましてや、いま菅は学会副会長の佐藤浩とツーカーの仲で、公明党を牛耳ることによって自民党を支配しているのだから、なおさらである。
あの激しい学会批判はウソだったのか?
その変身は東京都の豊洲新市場で盛り土がなされていなくて空洞のコンクリートに変わっていたという問題の比ではないだろう。
菅と竹中平蔵とのコンビやスポンサーの藤木企業との関係も描いて必読である。★★★(選者・佐高信)