「バスを待つ男」西村健著

公開日: 更新日:

 主人公は元警視庁捜査1課の刑事。定年退職して10年。数年前には都の交通安全協会も辞め、今は悠々自適だが、仕事が趣味のような人間には、時間を持て余すばかり。妻の勧めで始めたのが、東京都シルバーパスを使ってのバスの旅。街並みを眺めながら、刑事時代に関わった事件に思いを馳せたり、思いのほか楽しいバスの旅に病みつきになる。

 妙な男を見かけたのは平井の駅前。いつも同じ時間にバス停のベンチに座り、バスが来ても乗らずに、そのまま座っている。何をしているのか不思議に思ったが、その謎を解いたのはミステリー好きの聡明な妻。その後も、バスの旅で仕込んできたさまざまな謎――神社の狐の前掛けの意味、和菓子屋で団子を買う外国人の動機、女子高生に届けられる花の送り主といった謎を、妻は鮮やかに解いてみせる。

 謎解きの名人と評判になった主人公が、実は妻が解いたものだといつ告白するのかも物語の牽引力になっている。また、バス旅の行程も詳細を極め、よき東京案内、バス路線案内にもなっている。(実業之日本社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    石橋貴明のセクハラに芸能界のドンが一喝の過去…フジも「みなさんのおかげです」“保毛尾田保毛男”で一緒に悪ノリ

  2. 2

    清原果耶ついにスランプ脱出なるか? 坂口健太郎と“TBS火10”で再タッグ、「おかえりモネ」以来の共演に期待

  3. 3

    だから桑田真澄さんは伝説的な存在だった。PL学園の野球部員は授業中に寝るはずなのに…

  4. 4

    PL学園で僕が直面した壮絶すぎる「鉄の掟」…部屋では常に正座で笑顔も禁止、身も心も休まらず

  5. 5

    「ニュース7」畠山衣美アナに既婚者"略奪不倫"報道…NHKはなぜ不倫スキャンダルが多いのか

  1. 6

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  2. 7

    フジ火9「人事の人見」は大ブーメラン?地上波単独初主演Travis Japan松田元太の“黒歴史”になる恐れ

  3. 8

    ドジャース大谷 今季中の投手復帰は「幻」の気配…ブルペン調整が遅々として進まない本当の理由

  4. 9

    打撃絶不調・坂本勇人を「魚雷バット」が救う? 恩師の巨人元打撃コーチが重症度、治療法を指摘

  5. 10

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した