“大卒父”の子どもの学習時間は“非大卒父”の子どもの2倍
格差社会といわれる日本だが、近頃では家庭の格差が子どもの学力格差を生じさせていることが大きな問題となっている。橘木俊詔著「子ども格差の経済学」(東洋経済新報社1500円+税)では、格差研究の第一人者が、教育を取り巻く最新データを紹介しながら、塾や習い事が生む子どもの格差を徹底分析している。
有名大学に多くの合格者を出す名門高校に入学するためには、塾通いが常識となっている。著者が私立灘高校で70人の生徒にアンケート調査を行ったところ、入学前の塾通い経験者は実に100%。しかも、高校入学前に3年間通っていた生徒が47・1%、4~6年間と答えた生徒も22・9%に上った。つまり、中学入学と同時に、あるいは小学校のうちから高校入試に備えて塾通いをしていた生徒が大半ということだ。
塾通いは、何も灘高校を目指す子どもだけに限ったことではない。ベネッセ教育総合研究所の調査によれば、受験勉強をするための進学塾や学校の勉強を強化するための補習塾に通う子どもは、小学生で13・9%、中学生では43・2%となっている。そして塾通いは、子どもの学力にも明らかな影響を与えている。
小学生の学校外での学習時間別にテストの正答率を調査したところ、4年生では学習時間が15分の子どもの正答率が69・2%であるのに対し、1時間以上の子どもの正答率は87・0%。勉強が難しくなってくる6年生では、15分の子どもの正答率は53・3%、1時間以上勉強している子どもは76・1%と、学力格差が大きくなっている。
子どもの学習時間は、父親が大卒か非大卒かによって開きがあることも分かっている。大卒の父親を持つ小学生が進学塾に通っている場合、1日の学習時間は115・4分。ところが、非大卒の父親を持つ子どもでは、進学塾に通っていても学習時間は60・0分で、2倍近い差があるという調査結果が出ている。
本書では、世帯年収別の学習時間や、ピアノやサッカーなど学習以外の習い事にまつわるデータも紹介している。いずれも、父親が教育に熱心であるか否かが、子どもの学力などに大きな影響を与えることを示している。“教育パパ”になることが、子どもの将来に大きな影響を与えることを肝に銘じたい。