発信者不明のオピニオンはすべて捨ててしまえ!
インターネットの登場により、情報の“発信者”が爆発的に増加。テレビや新聞などの旧メディアにも、一見もっともらしいが、いい加減なニュースや論評があふれる時代となってしまった。情報の洪水の中、私たちはどうやって真偽を見抜けばよいのか。烏賀陽弘道著「フェイクニュースの見分け方」(新潮社 800円+税)では、元朝日新聞の記者であり、旧メディアの腐敗に切り込む著書を執筆してきたジャーナリストが、正しい情報を見分ける方法を解説している。
2016年春から夏にかけて、保守系政治団体「日本会議」に関する書籍や記事が次々と発表され、その多くが“日本会議は安倍政権の政策決定に重大な影響力を持っている”との説を展開していた。著者も多くの書籍を読んだが、その説を肯定できる事実を見いだせなかったとしている。
何しろ、“日本会議の人物Aまたはその周辺Bが安倍内閣関係者とCで会い、Dを話しその結果が政策Eになって姿を現した”などの事実がどこにも見当たらない。朝日新聞の「首相動静」欄を過去10年さかのぼっても、安倍総理と日本会議関係者が会った記事は2回しか出てこないのだという。
著者は単なる安倍派なのではと勘繰ってしまうかもしれないが、安倍政権や日本会議の掲げる政治目標については、ほとんどが賛同できないとも記している。しかし、批判をするなら事実を根拠としなければ、相手は痛くもかゆくもない。“ご意見はどうぞご自由に”と流されてしまうのがオチだと、警鐘を鳴らしているのだ。
それでは、どうやって正しい情報を抽出すればいいのか。本書が提案するのは、「証拠となる事実の提示がないオピニオン(意見)はすべて捨てて構わない」という大胆な方法だ。「~との指摘もある」「~が求められる」「~は避けたい」などの表現で語られ、主語がない文章も疑うべきと主張している。また、福島第1原発事故からSTAP細胞発見騒動まで、実際の記事を例に挙げながら、真実の読み解き方をアドバイスしていく。
引用文の正確さに着目すること、アマゾンや図書館のネット検索システムの活用法など、今すぐ使えるノウハウも紹介。情報を健全に疑う力を持ちたいものだ。