「フィリップ・マーロウの教える生き方」レイモンド・チャンドラー著、マーティン・アッシャー編、村上春樹訳
日本に、冒険小説、ハードボイルドというジャンルが確立されたのは1980年代。その精神的支柱となったのがレイモンド・チャンドラーであり、彼の分身であるフィリップ・マーロウだ。
編者はチャンドラーが名文家であると共に、ひとつの道徳律を提示し、さらにそれが今日的意味を持っていることを強調する。たとえば「性欲は男を老けさせるが、女を若々しくさせるといわれる」「彼は毎晩お祈りを唱える代わりに、ブラックジャックに唾を吐きかけるような警官だった」などがそれ。
本書には取り上げられていない作品の「高い窓」「プレイバック」の中からも言葉を拾い上げ、合わせて一冊とした珠玉の名言集。 (早川書房 1200円+税)