「室町は今日もハードボイルド」清水克行著
平安中期から江戸前期にかけて実在した「後妻(うわなり)打ち」とは、夫に捨てられた前妻が女友達を20人から100人も集めて後妻の家を襲撃し、台所を中心に徹底的に破壊するという慣習である。江戸時代になると「復讐」から単なる「儀礼」になるが、それ以前は、ときには後妻の命を奪うことも辞さないというすさまじさだった。捨てられた前妻の怒りが、元夫ではなく、後妻に向けられるもので、当時の女性の「弱い立場」の表れと見るべきである。
他に夫婦げんかで腹を立て、山で薪(まき)を取るのに使う鎌で切腹しようとした男の話など、古典に見られるアナーキーな逸話を紹介する。
(新潮社 1540円)