「破蕾」雲居るい著
お咲の夫は、南町奉行の内与力の岡田鉄心の甥。夫も与力だが、岡田家は一族揃ってバカ正直な頑固者で、扶持が少ないくせに、袖の下を受け取らないので、屋敷の維持もままならない。
そんな不満を胸に抱えながら、お咲は牢屋敷として知られる旗本・石出帯刀の屋敷に出向く。叔父と夫に代わって役人に弁当の差し入れに来たのだ。するとなぜか一室に案内され茶菓子の接待を受ける。やがてお咲は、自分が斬首される女囚の身代わりに「市中引廻し」されることを知る。女囚は実は御三家の血筋を引いており、斬首に至るまでの属刑に身代わりを立てることになったという。拷問蔵に連れていかれたお咲は裸にされ縄で縛られる。(「咲乱れ引廻しの花道」)
人気作家が別名で描いた時代官能小説集。 (講談社 704円)