「決定版 多肉植物図鑑」小林浩監修
静かなブームが続く多肉植物の図鑑。
多肉植物とは、貯水組織となる部分を備えた植物体を呼ぶ園芸用語で、サボテンの多くも含まれる。お馴染みの「蘇鉄」もその一種だ。
肥大した葉や茎、根などによってさまざまな表情を持つ多肉植物は、植物学的な分類では50以上の科にわたり1万5000種ほどあるといわれるが、現在も新種の発見があり、園芸品種の作出も続き、実際にはそれ以上の数があるという。
本書は、膨大な多肉植物の中から、人間によって生み出された個性豊かな品種の数々と、それらを支える原種を合わせて約1620種を収録する。
多肉質で丈夫なことからギリシャ語の「aionion(永遠に生きる)」に由来する「アエオニウム属」は、ベンケイソウ科の一属。スペインのカナリア諸島を中心に約36種の原種があり、園芸種も多い。
園芸種の多くが、茎の先端にロゼット状に葉が集まる。しかし、並べられた写真を見ると、その葉は光沢のある黒紫色をしていたり、緑色の葉に紫色の縁取りがあるもの、葉の縁にのぎ(細い針のようなとげ)があるものまで実に個性豊か。さらにそれぞれの葉の形や広がり方も千差万別で、一瞥しただけではとても同じ属の植物だとは思えず、1ページ目からその世界の複雑さと奥深さに圧倒される。
他にも、海中生物のように今にも動き出しそうな「アストロフィツム属」(サボテン科)や、盆栽の趣がある「コミフォラ属」(カンラン科)、放射状に丸く育つ初心者にも人気の「ハオルチアの仲間」(ツルボラン科)など。
見た目のユニークさと、その姿からは想像もできない美しい花に、これまで縁がなかった人も、ページが進むうちに心奪われること間違いなし。
(NHK出版 2750円)