「アフリカに咲く熱帯の花、笑顔の花」島岡由美子著
アフリカを象徴する巨木バオバブ。写真でよく目にするのは、葉がなく、広がった枝で、まるで空を支えているかのような勇ましい姿だが、実は美しい花を咲かせることをご存じだろうか。
本書は、タンザニアの常夏の島ザンジバル在住の著者がアフリカの大地を彩る熱帯花木を紹介するビジュアルガイド。
かの地で暮らし始めて30年以上になる著者だが、熱帯の花に興味をもったのはここ数年のこと。そのきっかけとなったのがバオバブの花だという。大きなバオバブに咲いていた真っ白な花を見た瞬間に恋に落ちたそうだ。
それまで熱帯の花に興味を抱けなかったのは、年中元気よく咲いているだけで、季節感がなくてつまらないと思い込んでいたから。その日以来、周りを見回してみると、常夏のなかにも季節があり、花の周期もあることに気づいたという。
世界三大花木のひとつ「アフリカン・チューリップ」は、日本人が思い描くチューリップのイメージからはかけ離れた花。10メートルを超す高木の先に咲くオレンジ色のド派手な花だ。
他にも、夜だけに咲き、巨大なソーセージのような実がなる「ソーセージ・ツリー」などの大きな木に咲く花をはじめ、南アフリカの国花「キング・プロテア」や、気温50度を超すオマーンの「デザート・ローズ」などの「他国で出合った花」や、あまりにも花が小さくて地味なため、葉が色鮮やかに変化した「苞」で虫や鳥を呼び寄せる「ヘリコニア」などの「珍しい花、ユニークな花」まで120種を網羅。
ページの合間には、現地の人々の笑顔の写真やスナップとともに当地の暮らしや文化も紹介。
美しくも力強い花々を通して、遠く離れたアフリカの大地がちょっと身近に感じられる一冊だ。
(かもがわ出版 2200円)