「ある行旅死亡人の物語」 武田惇志、伊藤亜衣著
共同通信大阪社会部の遊軍記者・武田は、身元や引き取り人が不明の遺体に関する「行旅死亡人データベース」にアクセスして、アパートの2階で発見された老女に行き当たった。
身元不明で現金3400万円を残していた。年金手帳から「田中千津子.74歳」と判明したが、本籍地が分からず、相続人も不明だ。賃貸借契約は「田中竜次」の名になっているが、男が住んでいた形跡はない。部屋には「田中」の印鑑と、「沖宗」という珍しい姓の印鑑が残されていた。「沖宗」は広島に多く、千津子はかつて、広島出身で3人姉妹だと言っていたという。ある日、武田は「沖宗ルーツ」というブログを見つけた。
数行の死亡記事から身元不明の老女の人生を探った記者2人によるルポルタージュ。
(毎日新聞出版 1760円)