「形見」 伊多波碧著
おすみは3歳の娘を連れて、寄せ木細工職人の仕事に復帰した。
欄間職人の夫・周吉との結婚を機に仕事を辞めたが、親方から頼まれ、周吉の許しを得たのだ。仕事中は、親方の奥さんが娘の面倒を見てくれる。
しかし、昼は夫の食事の用意に家に戻らなければならない。周吉はおすみの仕事を見下し、何かと嫌みをいってくる。許したものの家を空けるのも気に入らないらしい。そんな周吉の機嫌を損ねないよう、気を使いながらもおすみは仕事が楽しくてならない。12歳で孤児になり、親方に仕込まれた技術に誇りもある。
眠れぬ夜を過ごして早朝、娘と川べりを散歩していたおすみは、一膳飯屋を営むおけいに声をかけられる。(「山鳩」)
母娘が営む一膳飯屋を舞台に描く人情時代「名残の飯」シリーズ第3弾。
(光文社 748円)