記者らが伝えるニュースの裏側にある生きた現実
監督もナレーションで「通信途絶で、みな憔悴している。我々もそうだ。取材を社に送る手段がない」とつぶやく。
監督のチェルノフ記者は自身もウクライナ人。それゆえ取材対象に向ける目は単なる同情にとどまらない。よるべない人々を残して、取材映像を届けるために安全な外部に脱出する躊躇と葛藤を彼は何度も口にする。
報道人ストレス研究会編著「ジャーナリストの惨事ストレス」(現代人文社 2090円)は日本では阪神・淡路を機に、惨事取材の記者のストレスが従来の「受け手・送り手」の二分法に収まらなくなったと指摘する。自国が侵略された戦争であればなおのこと、「記者」と「被害者」の二重性に苦しむのはむしろ当然というべきだろう。 〈生井英考〉