島倉千代子や吉永小百合が巻き込まれた草加次郎事件
島倉は以前にも似たような嫌がらせを受けた過去があった。60年1月には事務所に火炎瓶入りのショルダーバッグが投げ込まれて、出演予定の劇場や自宅を爆破するという脅迫電話がかかる事件が起きた。このときは16歳の工員が犯人として逮捕されたが、その後も現金の要求や自宅への放火など、島倉を狙ったイタズラや脅迫が相次いで、「ご難続きの歌手」として話題となっていた。この事件でも当初はファンの仕業ではないかと疑われ、警察も「大体の見当はつけています」と逮捕に自信を見せていた。
しかし事件はその後、急展開を見せる。島倉事件の10日後、麻布に住むバーのホステスに草加次郎の署名入り爆発物が送られ、その後、有楽町のニュー東宝、日比谷映画劇場で立て続けにボール箱が爆発。さらに浅草の浅草寺境内ベンチと世田谷の電話ボックスに爆発装置が仕掛けられた本が置かれ、会社員がやけどを負う騒ぎに。
翌年、上野公園でおでん屋店主がピストルで撃たれて重傷を負い、同一の銃弾が警察に郵送される事件も起きた。同じ銃弾は金銭要求とともに吉永小百合や鰐淵晴子にも送られていた。さらに、松島トモ子ショー開催中の渋谷の百貨店や地下鉄銀座線車内でも爆発し、地下鉄は重軽傷者17人を出す惨事に。草加次郎の犯行とされた事件は実に22件に及んだ。