市川由紀乃に歌手“再出発”を決意させた大作曲家の笑顔

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 先生はレッスンがとても厳しく、エンドレスで指導してくださいます。あまりにも細かく、耐えられずに辞めてしまったお弟子さんもいたそうです。復帰後、5年ぶりの新曲「海峡出船」をレコーディングしたとき、そんな先生がスタジオのガラス越しに「大丈夫、大丈夫」と何度もうなずいて下さったのを覚えています。その直後に亡くなってしまうほど、重いご病気を患われていたのに、苦しい顔などまったくされなかった。

「悲しい歌を歌うときこそ、笑いなさい」「結末がわかるような表情をして歌っちゃダメ」……。先生の教えが今も頭の中でこだましています。

 みなさんの前に出る前、緞帳が開くのを待っているとき、私は手を合わせます。毎朝、般若心経を唱えていたわが家の習慣であるとともに、心を整え、真っすぐに歌が伝わりますように、力を出し切れますようにと願うルーティンなんです。

 気がつけば、来年で40歳。登り始めた山の頂はまだ見えませんが、7合目くらいの気持ちで、もっと頑張りたい。「紅白に出たい」とか、思っていても、口にできなかった夢もあります。

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