寅さん全作に出演…前田吟が山田洋次監督から得た“財産”
そして映画版「男はつらいよ」の前にTBSで放送された、渥美さん主演の連続ドラマ「泣いてたまるか」の最終話「男はつらい」(68年3月)でまず使っていただき、そして映画にも起用されたわけです。
実はそこで幸運がありました。テレビ版は当初、堺正章さんが演じる予定だったのです。ところが、その頃、堺さんは本業のグループサウンズが大忙しでドラマどころじゃない。それで代役として私にお鉢が回ってきたのです。
「男はつらいよ」の公開日は8月27日。目玉となるお盆興行のあとだから、松竹はそれほど当たると思っていなかったと思います。ところが、ふたを開けたら上映館は連日、満員御礼。すぐに第2作の製作が決まり、そのロケ中に第3作も決定したくらい大ヒット。ついには松竹のお盆と正月の看板シリーズになったのですから、私にとっても思わぬ展開でした。
山田監督には、「男はつらいよ」シリーズだけでなく、70年の「家族」、72年には「故郷」にも起用していただきました。ありがたかったですね。それ以降、ドラマのオファーがグンと増えて収入も安定。役者に専念できるようになったからです。それにしても、私のどこを山田監督が買ってくれたのか。これは直接、お聞きしたことがないのでお答えできませんが、ある時、監督にこう言われたことがあります。