区議に転身して3年…「筆談ホステス」斉藤りえさんは今
聴覚に障がいがありながら、メモ帳を介した美しい文字による筆談で銀座の高級クラブのナンバーワンホステスに上り詰めた斉藤りえさん(34)。2009年に出版した著書「筆談ホステス」(光文社)はベストセラーとなり、翌年には北川景子主演でドラマ化もされた。15年の東京都北区議会議員選挙に立候補し、トップ当選で政界入りを果たしたが、今どうしているのか?
■議会では音声読み上げソフトを活用
斉藤さんに会ったのは北区役所内にある議会フロア。スーツ姿で登場した斉藤さん、襟元には議員バッジが光っている。
「ゆっくりと話してもらえれば、何を言っているか分かります」
インタビューは手話や筆談を織り交ぜながら行われた。斉藤さんは相手の顔をじっと見つめ、唇の動きから発言内容を理解する。聴覚に障がいがあるため、普通に発声するのは難しい。大勢が出席する議会では、音声読み上げソフトを活用して発言している。
今回の取材では、記者の質問に可能な限り自らの声で答えてくれた。
「皆さまのおかげで不自由なくできていますが、こちらの思いが100%伝わっているのかという不安はあります。スピード感が大事な会議もありますし、ほかの議員さんの話すリズムを乱しているんじゃないかと心苦しい時もあります」
区議になってすぐ、電話受け付けのみだった区役所の夜間対応について区民からの声を受け、ファクスの設置を提案して採用された。区の「障害者福祉センター」で行われるイベントに出向くなど、多くの人から話を聴くようにしている。
政界転身から3年。家庭では7歳の女の子を育てる母親でもある。議会の会期中は視察や質問作りで多忙な日々だ。
「朝5時に起きて朝食とお弁当作り。車で娘を駅まで送り出した後、いったん帰宅して家事を済ませます。区役所に着いたら、資料の準備や音声ソフトの調整をして、10時から議会、夕方5時まで続きます。そこから娘の習い事のお迎えに行きます」
10年に妊娠を発表した際は、お腹の子の父親と入籍はしないとシングルマザー宣言をして世間を驚かせた。その後は単身ハワイで出産。親ひとり子ひとりの母子家庭だ。
「若かったとは思いますけど、当時の決断に今も後悔はありません。娘とは親子という関係を超えた“パートナー”のような存在です。ほかの家庭とは違う環境であることを理解しながら、7歳なりの小さな心で、いつも私が困らないように気遣ってくれます。結婚ですか? 今のところはないですね(笑い)」