トゥルーマン・ショー(1998年、米)
平凡な青年トゥルーマンの日常は、24時間監視カメラで全世界にリアリティー番組として放映されていた。周囲は全て虚構で、生まれてから一度も巨大スタジオから外に出たことがない。それに気づくと、命懸けで外界への逃亡を画策する。
「スタジオ内で今まで通りに生活した方が安全だ」
逃亡を翻意させようとしたプロデューサーにラスト、トゥルーマンが投げた言葉だ。
昨年公開された「ザ・サークル」は、「いいね」欲しさに自分の24時間を世界に配信した若い女性の愚かさを描いたサスペンス。監視社会を痛烈に風刺したシナリオは似ているが、完成度は断然こちらが上だ。
そのシナリオは、フィリップ・K・ディップの原作本のプロットを参考に作られたオリジナルでパンチが利いている。たとえば、晴天の空からなぜかライトが落ちてきたり、スタジオ内の生活を乗り切るため健康維持にビタミンDを知らずに摂取させられていたり。細かいところに工夫が施されているのだ。
それに主演のジム・キャリーがハマり役だ。本作までコメディー一辺倒だったが、初めて挑んだシリアスな演技は見事というほかない。
名匠ピーター・ウィアー監督の演出は静かに進むが、皮肉が利いていてどことなく不気味。もしも自分がトゥルーマンだったらと思うと、空恐ろしい。20年前に創造されたシニカルな世界観が現実になっているのだ。