「華氏119」期待はずれ? 伸び悩むM・ムーア監督の最新作
先の米国中間選挙に合わせて公開されたマイケル・ムーア監督の「華氏119」の興行が伸び悩んでいる。東京のメイン館は健闘だが、最終興収1億円ちょっとあたりか。2003年公開の「ボウリング・フォー・コロンバイン」(4億円)や翌04年の「華氏911」(17億3000万円)と比べても、その差は一目瞭然だ。
事前の報道番組などでは、ムーア監督自身がインタビューに応じる姿も大きく紹介された。米国の現政権に対する彼の舌鋒(ぜっぽう)は鋭く、映画も当然トランプ批判に満ち満ちた中身のように感じたものだ。実に効果的な露出であったと思う。それなのに、なぜ興行が伸びないのか。
同作の批判の矛先は、トランプだけに向かわなかった。オバマ前大統領含めた民主党へも批判の刃は飛び交い、環境汚染への警鐘を鳴らすかと思えば、銃犯罪から巻き起こった若い世代の台頭に期待を寄せる。批判と期待が入り交じり、映画は複雑な様相を呈した。
それは批判のみを研ぎ澄ませることで黒白をしっかりつけ、その手法として突撃取材を行ってきた彼の撮影手法の揺らぎに見えた。時代は、9・11後の米国を描いた「華氏911」からさらに悪化の度合いを深めている。トランプ台頭を経て、彼は自身のこれまでの製作手法に少し懐疑的になったのではないか。