著者のコラム一覧
本橋信宏作家

1956年、埼玉県所沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。私小説的手法による庶民史をライフワークとしている。バブル焼け跡派と自称。執筆はノンフィクション・小説・エッセー・評論まで幅広い。“東京の異界シリーズ”第5弾「高田馬場アンダーグラウンド」(駒草出版)発売中。「全裸監督 村西とおる伝」(新潮文庫)が、山田孝之主演でNetflixから世界190カ国同時配信決定。

「世界のクロサワ」の看板で渋る堀江しのぶの両親を説得

公開日: 更新日:

 ある日、テレビ画面から映画「八甲田山」(高倉健、北大路欣也主演/橋本忍脚本/森谷司郎監督 東宝・1977年)が流れていた。吹雪の遭難シーン。画面が白く埋まる。黒沢明がぽつりと言った。

「ああ、僕これ撮れない」

 野田は「え、なんですか?」と尋ねた。

「吹雪の中じゃキャメラが回らないよ。無理だよ」

 極寒において当時の機材ではバッテリーが上がってしまいカメラが回らなくなるおそれがあった。映画は真実に近いシーンをさまざまなテクニックで構築していく芸術である。だが本物志向の黒沢にはすべて実際の猛吹雪でなければならないのだろう。

 野田は、若い女性に対して面接でも平気で「何本食った?」と男性体験を聞き出すずうずうしさがある。ずばり核心に切り込む野田のきわどい質問は、“野田砲”とも呼ばれる。

 黒沢監督が「八甲田山」を見ていたときにも、この野田砲が炸裂した。

「(黒沢)監督はロケのとき、あの電柱が邪魔だ、あの家が邪魔だとか助監督に言って、どかしてしまうっていう噂がありますけど、それって本当なんですか?」

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2

    野呂佳代が出るドラマに《ハズレなし》?「エンジェルフライト」古沢良太脚本は“家康”より“アネゴ”がハマる

  3. 3

    岡田有希子さん衝撃の死から38年…所属事務所社長が語っていた「日記風ノートに刻まれた真相」

  4. 4

    「アンメット」のせいで医療ドラマを見る目が厳しい? 二宮和也「ブラックペアン2」も《期待外れ》の声が…

  5. 5

    ロッテ佐々木朗希にまさかの「重症説」…抹消から1カ月音沙汰ナシで飛び交うさまざまな声

  1. 6

    【特別対談】南野陽子×松尾潔(3)亡き岡田有希子との思い出、「秋からも、そばにいて」制作秘話

  2. 7

    「鬼」と化しも憎まれない 村井美樹の生真面目なひたむきさ

  3. 8

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 9

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  5. 10

    松本若菜「西園寺さん」既視感満載でも好評なワケ “フジ月9”目黒蓮と松村北斗《旧ジャニがパパ役》対決の行方