「水のないプール」昏睡レイプ魔役は内田裕也の原点か

公開日: 更新日:

 もちろん実際の被害女性が犯人に心を寄せるわけがない。本作はねりかの淡い喜びを含めて男の願望を物語化しただけだ。お叱りを覚悟で言うなら「男のメルヘン」。90年代に出現した「夜這いプレー風俗」はこうした願望の具現化だった。

 内田裕也は「自分は何でもできる。許される」という全能感を漂わせた人で、「ロケンロール」を繰り返しては都知事選に出たり政治の現場を見学したりした。本作の男はヒトラーを思わせる制服の警備会社社長(原田芳雄)の大言壮語を聞いて犯行に向かう。眠らせた女性をハーレムのように支配。「町を悪いヤツらから守っている」と妻に宣言し、罪の意識はない。これも全能感だろう。

 男が舌を出すラストはその後の内田裕也の方向性を暗示している。赤い舌が「これからも世の中を引っかき回してやる」と挑発しているようだ。

(森田健司/日刊ゲンダイ

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「NHKの顔」だった元アナ川端義明さんは退職後、いくつもの不幸を乗り越えていた

  2. 2

    永野芽郁の「文春」不倫報道に噛みついたGACKTさんは、週刊誌の何たるかがわかっていない

  3. 3

    前田健太「ドジャース入り」で大谷との共闘に現実味 日本復帰より「節目の10年」優先か

  4. 4

    元NHK岩田明子は何をやってもウケない…コメントは緩く、ギャグはスベる、クイズは誤答

  5. 5

    ウクライナ出身力士 安青錦がすべてを語った…単身来日して3年、新入幕で敢闘賞

  1. 6

    小田和正「77歳の現役力」の凄み…現役最年長アーティストが守り続ける“プロ意識”

  2. 7

    奥さんが決断してくれた…元大関の小錦八十吉さん腎臓移植を振り返る

  3. 8

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  4. 9

    のんを襲った"後輩女優の二股不倫報道"の悲劇…カルピスCMめぐる永野芽郁との因縁

  5. 10

    Mrs.GREEN APPLEとディズニーのコラボに両ファン懸念…売れすぎた国民的バンドゆえの"食傷感"