香取慎吾を起用…萩本欽一が浅間山荘事件から学んだTV哲学
また、ジャニーズ事務所退所以降、テレビ出演に恵まれない香取の境遇を萩本が1つのドラマに変えた点にも着目したい。この起用を見て、筆者は欽ちゃんのある発言を思い出した。
〈コント55号の練習中に、連合赤軍が人質をとって立てこもった浅間山荘事件(1972年)を生中継しててね。窓に影が映ったというだけで、みんなテレビの前にすっ飛んで行ったの。ディレクターまでもが。こっちは懸命に稽古しているのに。で、気付いたわけ。テレビは何が面白いとか、何がいいとかじゃなく、次に何が起こるかわからないときに最も人を引きつけるんだ。予測不能の『いま』を撮れば面白くなるんだって〉(朝日新聞・2015年7月11日付)
思い返せば、欽ちゃんの番組はバラエティでありながら、ドキュメンタリーの要素も入っていた。83年6月、「欽ちゃんのどこまでやるの!」(テレビ朝日系)で人気を得た「わらべ」のメンバーのスキャンダルが世間を賑わせ、彼女は謹慎になった。番組でこの話題に触れない手もあったが、萩本は真っ正面からぶつかり、電話出演させた。