追悼・風間ルミさん 純白のウエディングドレス姿で「私、プロレスと結婚します!」と宣言

公開日: 更新日:

 女子プロレスラーの風間ルミさんが、20日逝去した。享年55。華のあるルックスとグラマラスボディーでグラビアでも活躍した風間さんを知る女子プロ記者・伊藤雅奈子さんが素顔をつづった。

 ◇  ◇  ◇

 私は風間ルミさんにエロスを感じていた。右頬の下にできるえくぼ。鼻の上のほくろ。大きな胸。甘い声。エキゾチックな大きな瞳。身長は153センチで小兵。常に人を見上げて話す視線がまた、たまらなく艶っぽかった。

「やだーっ、かなかな。それいつも言ってくれるよねー。うれしいっ」

 ルミさんの特徴を挙げて“なりたい顔”であることを告げると、彼女はいつもこう言って大きく笑った。「かなかな」とは、私の愛称。「誰からもそう呼ばれてないなら」という理由で、ルミさんが付けた。こんな些細なことでさえ、他者とかぶることを嫌った。思えば、これが風間ルミの生き方。「道なきところに道をつくる」という固い信念が、こんなところでも顕在していた。

 シュートボクシングの世界から女子プロレスに身を投じたのは1986年、新団体「ジャパン女子プロレス」の旗揚げだ。“四天王”の元ビューティ・ペアのジャッキー佐藤(享年41)、ナンシー久美(60)、神取しのぶ(現・忍=56)が持つ男性的な容貌と対照的に、風間だけが長髪でアイドルフェース。

 加えて、峰不二子の縮小版というべくグラマラスボディー。男性ファン獲得の特攻隊になるのは火を見るより明らかで、ビジュアル系アイドルレスラーのジャンルを一身に背負わされた。

 ソロデビュー曲は秋元康が作詞。業界初のハート型レコードで赤、青、緑の3種類があった。イメージビデオ、彼女をモデルにした漫画連載とコミック、マルベル堂からプロマイドも発売され、グラビア誌「月刊PENTHOUSE」(日本語版)に登場。どれも女子プロ界初で、唯一だった。

「選手が宝。選手が支え」

 ジャパン女子解散後の92年に旗揚げしたLLPWでも、アップデートしていった。同団体では初の社長とレスラーを兼任。女性らしい華やかさ、激しいプロレスで掲げたコンセプトは「華激プロレス」。93年に勃発した団体対抗戦では後塵を拝したが、先見の明は誰よりも優れていた。95年には総合格闘技に目をつけ、女子初の金網バーリトゥード大会「L-1」を開催。若手選手をディスコのジュリアナ、暴走族のレディース、宝塚のジェンヌ、ロカビリーのキャロルなどにコスプレさせ、リングを華やかに彩り、新たなファンを獲得した。

 2000年には“ミスター女子プロレス”神取と天龍源一郎(71)のシングルマッチを企画。男女を超越した看板選手の一騎打ちは業界初の試みだった。03年の現役引退後はLLPWのアドバイザーとして、04年にマット界初のゲイレスラー・ユニット、韓国人レスラー2人をデビューさせ、LGBTQK-POPといったトレンドをいち早く取り入れるなど、高いプロデュース力を発揮した。

 06年には、参議院議員・神取忍の公設秘書に。女子プロ団体元社長が国会議員の公設秘書に就任したのも、風間だけが成し得た偉業だ。

 食通の一面もあり、東京・神楽坂に「豚菜キッチン 絆」を、その後、四谷でバー「Lumiere(ルミエール)」を経営。店名はフランス語で「光」。02年に出版した写真集と同名だ。

 振り返れば、17年間に及ぶ選手生活は、常に「私が」ではなく、「選手が」「団体が」だったように思う。

 現に、自分のためだけに時間を割いたのは、「デビューするまでの半年間と、社長業を退いてから引退するまでのおよそ1年間だけだった」と話していた。

「選手が宝。選手が支え。だから、社長でいられた」という気持ちが常にあった。給料袋と共に感謝の思いとアドバイスを毎月、手紙にしたためて選手に渡した。風間の手紙を大切に保管している選手の話を伝えると「えーっ、そんなこと言ってたの? やばいっ、泣きそう」と大きな瞳を手で覆った。

 LLPWの旗揚げ戦では「私、プロレスと結婚します!」と宣言して、純白のウエディングドレスに身を包み、引退式でも、見目麗しい白いドレスでリングインした。人生最期に眠ったのは真っ白い棺だった。美しいまま星になったルミさん。

 今でも私の“なりたい顔”だ。

(伊藤雅奈子/元「週刊ゴング」記者)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    朝ドラ「あんぱん」教官役の瀧内公美には脱ぎまくった過去…今クールドラマ出演者たちのプチ情報

  2. 2

    松本潤、櫻井翔、相葉雅紀が7月期ドラマに揃って登場「嵐」解散ライブの勢い借りて視聴率上積みへ

  3. 3

    永野芽郁&田中圭の“不倫LINE”はどこから流出したか? サイバーセキュリティーの専門家が分析

  4. 4

    低迷する「べらぼう」は大河歴代ワースト圏内…日曜劇場「キャスター」失速でも数字が伸びないワケ

  5. 5

    遠山景織子 元光GENJI山本淳一との入籍・出産騒動と破局

  1. 6

    河合優実「あんぱん」でも“主役食い”!《リアル北島マヤ》《令和の山口百恵》が朝ドラヒロインになる日

  2. 7

    キンプリが「ディズニー公認の王子様」に大抜擢…分裂後も好調の理由は“完璧なシロ”だから 

  3. 8

    中井貴一の“困り芸”は匠の技だが…「続・続・最後から二番目の恋」ファンが唱える《微妙な違和感》の正体

  4. 9

    TBSのGP帯連ドラ「キャスター」永野芽郁と「イグナイト」三山凌輝に“同時スキャンダル”の余波

  5. 10

    永野芽郁&田中圭「終わりなき不倫騒動」で小栗旬社長の限界も露呈…自ら女性スキャンダルの過去

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    遠山景織子 元光GENJI山本淳一との入籍・出産騒動と破局

  2. 2

    巨人「松井秀喜の後継者+左キラー」↔ソフトB「二軍の帝王」…電撃トレードで得したのはどっち?

  3. 3

    反撃の中居正広氏に「まずやるべきこと」を指摘し共感呼ぶ…発信者の鈴木エイト氏に聞いた

  4. 4

    巨人のW懸案「ポスト岡本和真&坂本勇人」を一気に解決する2つの原石 ともにパワーは超メジャー級

  5. 5

    永野芽郁&田中圭の“不倫LINE”はどこから流出したか? サイバーセキュリティーの専門家が分析

  1. 6

    松本潤、櫻井翔、相葉雅紀が7月期ドラマに揃って登場「嵐」解散ライブの勢い借りて視聴率上積みへ

  2. 7

    吉岡里帆&小芝風花の電撃移籍で様変わりした芸能プロ事情…若手女優を引きつける“お金”以外の魅力

  3. 8

    【今僕は倖せです】のジャケットに表れた沢田研二の「性格」と「気分」

  4. 9

    吉田拓郎の功績は「歌声」だけではない イノベーションの数々も別格なのだ

  5. 10

    裏金自民が「11議席増」の仰天予想!東京都議選告示まで1カ月、飛び交う“怪情報”の思惑