五木ひろしの光と影<8>23歳の「三谷謙」は「全日本歌謡選手権」出場を決意する
「くだらないって思ってたんだよ。なんでもかんでも厳しくしすぎるなんて意味ないじゃん。本当によくないところを直してやろうっていう厳しさじゃないんだ。先生方も番組のカラーに少し合わせ過ぎてたかな。厳しく言うことに酔っちゃってたのかも」(平尾昌晃)
「10週勝ち抜いたら歌手デビュー」で人気を博したテレビの視聴者参加番組「全日本歌謡選手権」だが「プロ対アマ」の他流試合だけでなく、淡谷のり子、浜口庫之助、船村徹、竹中労ら審査員の厳しい寸評も番組の売りとなっていた。番組の立案者であるディレクターの斉藤寿孝も「遠慮せずやって下さい」とネジを巻いていたという。筆者の取材に応じてくれた生前の平尾昌晃が往時に抱いた懸念とはそのことで、審査員の厳しさがいかなるものだったかは、次に紹介する新聞の読者投稿欄からも判然とする。
《毎週テレビの「全日本歌謡選手権」という番組を見ているが、審査員の態度がどうも気になる。歌手がせっかくプロをめざして、きびしい予選を勝ち抜いてきたのに、ある審査員は「プロになるのをやめたまえ」などと言う。これではあまりに気の毒だ。