朝岡聡さんは35歳でテレ朝退社しフリー「局アナ時代より稼いでいる? どうかなあ(笑)」
朝岡聡さん(元テレビ朝日アナウンサー/62歳)
テレビ朝日系平日夜の報道番組「報道ステーション」の枠で、かつて放送されていた「ニュースステーション」。久米宏、小宮悦子らがお堅いニュースをわかりやすく、また鋭く切り込んで伝え、高視聴率を記録していた。同番組でスポーツを担当していたのが局アナだった朝岡聡さんだ。朝岡さん、今、どうしているのか。
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「外で話すのも何だから、家に来ちゃってください」
横浜市内の某駅で待ち合わせた朝岡さん、まずはこう言って、愛車のドイツ車・クラブマンミニを駆って記者を自宅兼事務所へ。自宅は洋風の2階建て。テーブルやイス、カーテン、壁紙などインテリアの細部にまでこだわりが感じられる、実にオシャレな家だ。
「ヨーロッパのインテリアが好きでね。結婚を機に、一つ一つ買い集めました。ここに越してきたのは、フリーになってからですね」
35歳でテレ朝を辞め、フリーになったという。
「当時は“アナウンサー35歳フリー説”を勝手に信じ込んでいたんですよ(笑い)。久米さんも、みのもんたさんも35歳でフリーになったので。よし、オレもフリーになって、番組のセンターでしゃべるぞ! と意気込んでいたんですねぇ」
なるほど。
「最初は良かった。TBSの『筋肉番付』の実況をレギュラーでやらせていただいたりしてね。ところが、42歳のとき、パタッとテレビのレギュラーが途絶えた。ずっと画面に出ていた身としては、不安なわけです。小学生の娘に『パパ、何でずっとおウチにいるの?』と聞かれるし(笑い)。でも、それが転機となりました。“音楽留学”をし、アナウンサーとして自分だけのカラーを見つけることにつながったんです」
■現在の肩書は“コンサート・ソムリエ”
久米司会の「ザ・ベストテン」(TBS系)などを見て育った朝岡さんは、アナウンサーを夢見た一方、ベートーベンの音楽が流れる家庭で育ち、小学生の時にリコーダーに魅了され、中高時代は吹奏楽部、大学では慶応バロックアンサンブルでサークル活動。クラシック音楽やオペラが大好きだったのだ。
「1年半の間、毎月1回、2~3泊5日で渡欧しオペラを鑑賞し、現地の名所・旧跡や食事を楽しみ、雑誌『音楽の友』に連載していました。それから本格的に“コンサート・ソムリエ”としてクラシックコンサートの企画、構成、台本執筆、司会をするようになりました」
“コンサート・ソムリエ”の肩書は朝岡さんの造語。ワインソムリエのように、コンサートの客にクラシックの知識がなくても楽しんでもらえるように、との思いで名乗っているのだそうだ。
昨年4月に東京芸術大学客員教授に就任
それにしても、フリーになり、いきなり留学なんて、奥さんがよく許してくれたなぁ。
「『やりたいなら、いいんじゃないの』と言ってくれました。私自身もまだ子供が2人とも小さかったのですが、先々を考えて不安になるより、『行ってみたい、行くなら今しかない!』という気持ちが強かったですね」
案ずるより産むがやすし、か。
「今では月平均4、5回がコンサート・ソムリエの仕事です。ほかにイベントの司会もあり、また昨年4月に東京芸術大学客員教授に就任し、学生に舞台芸術の話をしています。局アナ時代より稼いでいる? 出ていくものも多いのでどうかなあ(笑い)。ステージ衣装をコンサートに合わせてあつらえ、CDや書籍の購入、17年連続でイタリアのオペラ座で鑑賞、イタリア語のプライベートレッスン……」
さて、朝岡さんは1982年、テレ朝入社。野球やプロレス実況を担当し、85年に「ニュースステーション」がスタートすると、初代スポーツ担当に。ほかに情報バラエティー「はなきんデータランド」などでも司会を務めた。
「『報道ステーション』と見比べると、『ニュースステーション』は世界の秘境を訪ねるドキュメンタリーがあったり、米俳優ハリソン・フォードをゲストに呼んだり、バブルの時代だったから豪華でした。久米さんは私がフリーになったとき、当時の事務所に紹介してくれた。小宮さんとは以前、『ニュースステーション』OB・OG会でお会いしました。番組終了後、おふたりと定期的に会うことはないですが、心のつながりはずっと感じていますね」
27歳のとき、中学時代の同級生で、元JALの客室乗務員と結婚。30歳の長女は劇場のチケットセンターのオペレーター、27歳の長男・周さんはサックス奏者やアパレルデザイナーとして活躍中。
長男は今年、結婚予定で、朝岡さんは目下、夫人と長女の3人暮らし。ジムに通って減量し、ときに料理や庭いじりも。
「季節に応じた花壇作りを楽しんでいます。今まで音楽の本を出してきたので、今度はルネサンス庭園のエッセー本を出したい。やりたいことが増えちゃって、ハハハ」
3月9日、「サントリーホール」ブルーローズで「オペラ・アカデミー~オペラティック・コンサート」のナビゲーターを務める。
(取材・文=中野裕子)