(8)割れんばかりの拍手と声援の中、「初めまして。蝶花楼桃花師匠でーす!」
「この子は根は陽気なんですが、実は繊細で心が折れやすいんです。楽屋での心ない言葉の暴力、セクハラ、パワハラ、モラハラで流してたのは悔し涙だったんです。それが今日、初めてうれし涙を見ました」
涙の訳はそういうことだったのだ。それにしても、これほど師弟愛にあふれた感動的な披露口上は初めてだ。
トリに上がった桃花は、割れんばかりの拍手と、「おめでとう」の声援に迎えられた。
「初めまして。蝶花楼桃花師匠でーす!」
自分で「師匠」と言い、両手を振って応えるのが彼女らしい。
「挑戦して、ネタ下ろしをします」と演じたのは、小朝の十八番「浮かれの屑より」、通称「紙屑屋」。噺の中で三味線を弾き、民謡を歌い、新内を語り、歌舞伎「櫓のお七」の人形振りをするなど大熱演だった。その明るく陽気な高座を見ていると、今後の活躍が約束されているような気がした。
(聞き手・吉川潮)