NHKが健全な公共放送になる日は来るのか 元記者の葬儀に森元首相から弔花が届いた
今年8月、元NHK記者が死亡した。その葬儀に贈られた花を参列者は複雑な思いで見た。送り主が森喜朗元首相だったからだ。
私は2021年に、「指南書問題」という記事を書いた。その詳細は「NHK記者がNHKを取材した」(電子書籍)で確認していただきたいが、問題発言で政権崩壊の危機にあった当時の森首相に危機を切り抜けるための指南書を記者が書いていたというものだ。当時は誰かは不明とされたが、私の取材でそれがNHKの当時の首相官邸の記者だったことがわかった。
葬儀は指南書を書いたとされる元記者のものだった。実は当時から指南書を書いたのはNHKの記者だとの指摘はあった。しかしNHKは当時の海老沢勝二会長がそれを否定。私の記事に対しても、NHKは当時の会長答弁を繰り返した。私は記事で、NHKにその検証を求めた。それがNHKの再生に不可欠だと考えたからだ。しかし当事者の死で、その機会は失われた。
本来、報道機関とは何か問題が起きれば事実を解明すべき存在だ。では、NHKは自らに不都合な問題が起きた時、それに向き合ってきただろうか? 私にはその印象はない。どちらかというと、世間が忘れるのを待つというのがその印象だ。そのひとつがこの指南書問題であり、もうひとつが小欄で何度も取り上げている佐戸未和さんの過労死の問題だ。小欄も残すところ2回となった今回、やはりこの問題を取り上げないわけにはいかない。