すぎもと まさとさんの原点は「スーダラ節」 生家の慰安旅行で小学生の僕が歌うとドッと受けた
シャンソンの曲からできた小柳ルミ子の「お久しぶりね」
それはともかく。その頃、僕は親父の関係の工務店とガラス屋の奥さんたちがカラオケ屋をやるというのを手伝わされていましてね。そんな僕に芸能界の恩師が「死ぬ気でやってみないか」と小柳ルミ子の曲を頼んできた。それがヒットした「お久しぶりね」。これは金子由香利が歌ったシャンソン「再会」の出だしのフレーズがヒントになった。かつての恋人と再会した女性が「あら、ボンジュール、久しぶりね」と声をかけるんです。作曲家になって10年目のことです。
紅白に出ることになった「吾亦紅」のきっかけはそれから10年後。母親が亡くなった時、うちによく遊びに来ていたちあき哲也(作詞家)が僕があまりにしょげているので「お母さんに」と詞を書いてくれた。でも、曲を作る気になれるわけがなくて1年半後にできたのが「吾亦紅」です。
ただ、ものすごくプライベートな曲なので、アルバムの1曲くらいのつもりでした。テイチクの会議でも「作家のマスターベーション」って言われ、話題にもならなかった。でも、テイチクで来年は肩叩きされるような人が、朝と帰る時に必ず「吾亦紅」を聴いていて、「誰の曲?」と聞かれたら「テイチクの歌だ」と言ったというエピソードもあるんです。それが70万枚を超えるヒットになった。本当にうれしかったですね。
あがり症だし、紅白で歌うとは夢にも思っていませんでした。それでもテイチクの宣伝マンとディレクターと飲んでたら「紅白が決まった」と2人が男泣きする姿を見て覚悟を決めました。紅白に出て歌ったら本当に気持ちよかったですけどね(笑)。
(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)
■最新シングル「薄荷抄」
◇ディナーショー 12月20日午後6時(浅草ビューホテル、ゲストはウクライナの楽器、バンドゥーラ奏者のカテリーナ)