映画で理解する「政治とカネと派閥」3作品 若かりし萩生田光一氏は「国会へ行こう!」に出演
東京地検特捜部は19日、政治資金規正法違反の嫌疑で清和政策研究会(安倍派)と志帥会(二階派)両派閥事務所に対する家宅捜索に踏み切った。岸田首相は14日に安倍派閣僚4人を全員“更迭”しているが、当初は二階派の閣僚2人は続投させる意向を表明(小泉法相、自見地方相はその後派閥離脱)。
派閥によって異なる扱いに驚きが走っている。パーティー券の巨額裏金疑惑の舞台となるだけでなく党内権力闘争の舞台になるのが「派閥」だ。自民党を支配する「派閥」とは一体何か。ここでは「派閥」を描いた映画を紹介しよう。
■熾烈な派閥間闘争を描いた「小説吉田学校」
出発点になるのは「小説吉田学校」(1983年)。原作は戸川猪佐武、監督は「日本沈没」や「八甲田山」で知られる森谷司郎。戦後日本の骨格を形成した宰相吉田茂を森繁久弥、好敵手鳩山一郎を芦田伸介、三木武吉を若山富三郎という重鎮が演じる。
GHQ占領下の日本政治は再軍備や講和条約締結に関わる路線対立を基軸としていたが、同時に吉田と鳩山という2人の巨頭を巡る複雑な人間関係に基づいて展開された。
吉田茂は、三木武吉や河野一郎ら党人派に対抗するべく、池田勇人や佐藤栄作ら官僚出身議員を側近に据え「吉田学校」と称された人的集団を形成。この吉田派を源流として生まれたのが「宏池会」(池田派、大平派などを経て現岸田派)や「周山会」(佐藤派、田中派などを経て現茂木派=平成研)だ。
55年の自由党(吉田系)と日本民主党(鳩山系)による保守合同で自由民主党が誕生するまでの政治史を「派閥間の闘争」の視点から理解するのにオススメだ。
■金権政治と贈収賄の腐敗を暴き出す「金環蝕」
続く「金環蝕」(山本薩夫監督=75年)は高度経済成長期に所得倍増計画を唱えた池田勇人政権を舞台に佐藤派と争って巨額の「実弾」が飛び交った自民党総裁選の金権政治と建設工事を巡る贈収賄の腐敗を暴き出す。
原作は石川達三の同名小説。池田の懐刀として裏金工作を行う怜悧冷徹な官房長官を仲代達矢、国会で疑惑を追及する与党議員(河野派)を三国連太郎、疑惑に食い込む金融商を宇野重吉が演じる。
他に入札に口出しする首相夫人(京マチ子)、裏金捜査を懸念する法務大臣(大滝秀治)に対し「政治献金案件としてうまく処理します」と言い放つ検事総長(馬場義続がモデル)などカルピスを原液で一気に飲み干すような「規格外の濃さ」を感じさせるキャラクターが勢揃い。圧倒的熱量の映画で「これぞ昭和映画」の代表格でもある。