松尾潔(前編)この国を覆う「忖度」の空気をつくる、多くの言葉たち

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「松尾潔は共産党」という書き込みに

 ──その、まさか1年後に、日刊ゲンダイ紙上で「スマイルカンパニー契約解除全真相」を明かすことになろうとは。

松尾 自分でもビックリですよ。人生なんて一瞬にしてパッと変わっちゃう(苦笑)。

 ──では、日刊ゲンダイについて、それまでどういう印象を抱いていましたか?

松尾 割合、好印象を持っていました。イデオロギー的に肌合いが近いのもそうだけど、やっぱり五木寛之さんですね。連載「流されゆく日々」を長くおやりになっている。五木さんと僕は同郷にして同窓。五木さんも小説家になる前はクラウンレコード専属作詞家だったという経歴をお持ちなので、一方的に親近感をおぼえて若き頃から今に至るまでお慕いしていましたね。以前、由紀さおりさんに「松尾さんといると五木寛之さんのお若い頃を思い出すわねえ」なんて言われて、つい調子に乗ったりもして(笑)。

 ──それで、2022年9月からの連載が決まるわけですが、2カ月前の7月8日、安倍晋三元首相の銃撃事件が起きます。

松尾 なんと、連載依頼を受けた翌日にね。そこで「第0回」という感じで緊急寄稿したんです。それもあって、政治を語っている印象が強いのかもしれない(苦笑)。

 ──昨今、よく見かけるのは「松尾潔共産党」という書き込みです。

松尾 ネット空間で絡んでくる人って、党派性やイデオロギーを絡めて攻撃してくる。この本にも登場する自民の石破茂さんや立憲民主の小川淳也さんとの交流には目もくれず、選挙期間中に一度街宣を見に行っただけで、共産党の山添拓さんと親密であるかのように延々と拡散させるでしょう。僕は共産党に限らず、どこかの党員であったり、固定の支持者だったことは一度もない。にもかかわらずです。

 ──小泉今日子さんも「キョンキョンは共産党」とか「正真正銘“真っ赤な女の子”になった」って叩かれたりしていました。

松尾 絡んでくる人にとって最も都合が悪いのは、僕が共産党員じゃないという事実なんです。つまり、彼らこそ党派性を求めているわけで、奇妙な現象だと思う。そう言うと「こいつは、そんな手あかの付いたことを言ってやがる」ってまた匿名の人から叩かれる。「筋金入りの匿名」っているんですね(笑)。(後編につづく)

(聞き手=細田昌志/ノンフィクション作家)

 ◇  ◇  ◇

【後編】では現在の日本を覆う言論空間に警鐘を鳴らしつつ、連載中の秘話・挿話・逸話について存分に語っている。

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