【追悼】曙太郎(上)希代の名横綱なのに敵は土俵の外にいた…師匠・東関親方との対立も深刻
曙の横綱土俵入り(写真)は、海外のメディアからおおむね好意的に報じられた。日本の国技・大相撲の頂点に君臨する横綱が、実は米・ハワイ出身という意外性は、国際感覚に敏い海外メディアにとって食いつきもよく「かえってよかった」という声も聞かれたくらいである。何はともあれ、曙は、貴乃花及び日本相撲協会の窮地を救ったのである。
にもかかわらず「初の外国人横綱」である曙に対し、日本相撲協会はどことなく冷淡だった感は否めない。92年九州場所で14勝1敗で優勝をはたし「横綱昇進間違いなし」の声も聞かれる中、横綱審議委員会は「風格、実績共にまだ十分ではない」として昇進を認めなかった。横綱空位が5場所も続いていた事実を鑑みると、賢明な判断とも思えなかった。
横綱昇進後も「品格」という決まり文句で、何かにつけて外国人横綱は牽制され続けた。昨今の元横綱・白鵬の宮城野部屋の閉鎖騒動を見るにつけ「横綱とはいっても外国人だから」という意識が見え隠れしたことは否定できまい。いや、はっきり言ってしまえば、差別意識はあったと思う。敵は土俵の外にこそ顕著だったのだ。