なぜ令和ロマンは賞レースに出続ける? 3冠制し、身内のヘイトも無視する戦闘力
賞レース3冠の令和ロマンに賛否
芸歴10年以下のお笑い賞レース「ABCお笑いグランプリ」(テレビ朝日系/以下ABC)が7月7日に開催。M-1に続き、令和ロマンが圧倒的強さで優勝した。これで令和ロマンの保持タイトルが「M-1グランプリ」(テレビ朝日系)、「NHK新人お笑い大賞」(NHK)、「ABC」の3冠となった。
まさに令和ロマン一強といった様子だが、これを現役のお笑い芸人はどうみるか。別名義で芸人活動をするなか、年間100本以上のライブに出演。自身もライブ主催の経験もあるという帽子田さんは以下のように考察する。
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かが屋の「マジだるい!」は出場者の総意だろう
今年のABCも面白かった。お笑いファン以外の人が想像する賞レースは漫才の「M-1グランプリ」やコントの「キングオブコント」(TBS系/以下KOC)、ピン芸人の「R-1グランプリ」(フジテレビ系)のように種類ごとに分けられている。
それに対して、ABCは漫才・コント・ピン芸なんでもあり。個人的にはすごく見ごたえがある。しかもお笑いに対しての熱が高いABCテレビが制作しているから、限られた予算ながらすごく盛り上げてくれるし、芸人に対してのフォローも手厚い。僕はとっくに出場資格を失っているが、もっと若手の時は出たくて出たくてたまらなかった。
というのも、ABCはM-1やKOCに比べて、優勝までの道筋を想定しやすいからだ。まず若手同士の戦いなので、参加人数も少ないし、何よりネームバリューのあるベテランがいるわけでもない。かつての優勝者は同世代の若手なので、優勝した姿も想像しやすい。やはり若手は、ABCに対して、より強く優勝を夢見てしまうだろう。
というのを踏まえたうえで、今年のABC。M-1 2024の王者でもある、令和ロマンが危なげなく優勝。
番組上でもくるまは「またM-1でお会いしましょう」という上からムーブで、他の出場者のブーイングを大いに食らっていた。令和ロマンと同じブロックで敗れたかが屋・賀屋の「マジだるい!」と素直な敗者コメントに、会場が沸いたりもしていた。
しかし、この「マジだるい!」というセリフ。結構多くの若手芸人が本気で思っただろう。僕はこのABC優勝で、令和ロマンが若手芸人から割とヘイトを集めてしまったと考える。
M-1王者を酷評できる審査員がいるのか?
そもそも令和ロマンのテレビ拒否宣言をはじめとしたスタンスを、「それってどうなの?」と思っている芸人は多々いる。それは「妬み」だ、と言ってしまえばそれまで。
だが、やっぱり芸人になるからにはテレビに出たいと夢見ている若手はいまだに多い。テレビに出て売れるには賞レースで結果を残す方が早いので、テレビを目指してネタを劇場でネタを頑張っているのだ。
それなのに、喉から手が出るほど欲しい賞レースタイトルを総なめしている令和ロマンが、「テレビには出たくない」と言い出したら、若手芸人の癇に障るのは仕方ないと思ってほしい。飲み会で令和ロマンに対する妬み嫉みで、酒を飲みたい夜だってあるのだ。
そのような前提がある中で、M-1を獲得後のABC参戦。M-1より賞レースとしてはイージーで、なおかつ無名の若手の登竜門であるABCまで荒らす理由が分からない、というのが僕の正直な感想だ。
別にルール違反ではないけど、モラル違反に近いという感覚がある。M-1王者を酷評できる審査員なんているはずもないし、現にABCの審査員コメントでも非常に気を使われているのが見てとれた。
賞レースに出続ける彼らは「バーサーカー」だ
では何故令和ロマンは若手芸人からのヘイトを集めながらも、賞レースに出続けるのか。僕はただ令和ロマンとしては優勝に伴ってもたらされる賞金や仕事はどうでもよく、ネタと賞レースなどのバトルが好きなただの「戦闘狂(バーサーカー)」なんじゃないかな、と何となく想像している。
令和ロマンは今年もM-1に出て、優勝する気マンマン。もう令和ロマンは殺す勢いで誰かが快進撃を止めなければ、賞レースでの爆走を止められないと思う。
個人的にはそれが今年のABCで爪痕を残した若手の誰かだったらいいな、とお笑いファンの一人として夢見てしまう。その方がドラマが起こって面白いから。
(帽子田/芸人、ライター)