まったく外に出られなくなって…緑川ちひろさん突発性難聴との闘い
緑川ちひろさん(タレント/31歳)=突発性難聴
「この病気は完治する人が少ない。やれることはやりますが、治るという保証はできません」
そう聞いたときはショックでした。ひと言で言えば「絶望」……。何もかも嫌になってしまうほど落ち込んで、悩んで、とても受け入れられない状況が長く続きました。
異変は2022年の春、ある朝目覚めたら右耳だけ、まるでプールの中に入ったようにくぐもっていたのです。初めは飛行機の離着陸の時や新幹線でトンネルを通過する時に耳が詰まるような一時的なものだろうと思っていたのですが、何時間経っても治る気配がありません。でも仕事もあったので、すぐに病院には行かず、ぼわっとした状態のまま4日間過ごして、5日目の日曜日にやっと病院を受診しました。
ネットで見つけた日曜受診可能の病院に行って、聴力検査などした結果、そこでは「突発性難聴」とは診断されず「薬で治ることもある」と言われて、1週間分の薬を処方されたのです。
でも、だんだんひどくなってきて耳鳴りが出始めました。そこで、薬を飲み切る前に、耳鼻科に強い別の病院を受診しました。再び検査をすると、すぐに「突発性難聴」と診断されて、即ステロイドの点滴を打たれました。
この病気は、症状が出始めてから1週間以内にステロイドでガツンと炎症を抑えることが唯一の根本治療だそうです。私の場合、少し遅かったのかステロイドを打っても良くなりませんでした。逆にめまいが出始めて悪くなるばかり……。こうなると、もうステロイドを打っても意味がないので、点滴はその一度きりで終了し、あとは耳鳴りには耳鳴りの薬、めまいにはめまいの薬という対症療法だけ。要は「この状態に慣れていくしかない」と告げられました。
左右で聞こえ方の違うつらさ、24時間鳴りやまない耳鳴りとめまい……。これが完全には治らないとわかってからは、まったく外に出られなくなりました。めまいは回転性で家の中でも転んでしまうほど。仕事ももちろんできませんし、テレビやスマホの画面を見るだけで気持ちが悪くなってしまうので、丸1カ月、ほぼ寝たきり状態でした。友達からメールをもらっても、返信などとてもできなかった。ずいぶんみんなに心配をかけました。
でもグルグル回転していためまいが立ちくらみぐらいになって、3カ月目から少しずつ、近所のカフェなどに外出するようになりました。そして半年ぐらい経った頃に、やっと「この状態と付き合っていくしかない」と“諦め”の境地に立つことができました。どうしたら普通に生活できるかを前向きに考えられるようになって、休養から約10カ月後、仕事に復帰できました。
その間、家族は全面的にサポートしてくれました。「ゆっくりして、仕事なんてしなくていいよ」といつも励ましてくれたのです。あまりに人と会わない時間が長かったので、友達と数カ月ぶりに会うとなったときには緊張しました(笑)。