杉咲花は「光と影の女優」だ どちらにも繊細な陰影を付けて演じ分ける
彼女は、登場人物の「光と影」をさまざまな作品で演じてきた。最近の主演ドラマでは2021年の「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」(日本テレビ系)、2024年4月期の「アンメット ある脳外科医の日記」(カンテレ・フジテレビ系)での好演も印象的だったが、2022年のNHKドラマ「プリズム」では、テラリウム(ガラス容器の中に植物や生物を配置して作る作品)を作る園芸店アルバイトを演じ、叙情的な演技を見せた。
どの主人公も明るいキャラクターで、そこに繊細なタッチで陰影を付けられるのが、杉咲花の演技の特長だ。だから、彼女は、テレビドラマと映画の両方と相性が良く、親しみやすさの中にある深さが、心の奥で響く。
今回の「海に眠るダイヤモンド」の朝子も、単に明るく元気なだけの人物ではないと予想される。
彼女が10代のころに何度かインタビュー取材したが、素顔の杉咲花は温和で、マイペースで、映画「愛を積むひと」の撮影で行った北海道の思い出を話していたとき、急に思い出して「あっ、私はしろくまが好きなので、開いた時間に旭山動物園に行きました。かわいかったです」(雑誌「girls!」vol.43)と笑顔で話してくれて、無邪気な一面を感じた。
杉咲花を秋のメニューにたとえるなら、栗ごはん(和栗)。噛みしめると多彩な味わいを見せて、あったかな気持ちにさせる。そして、本物の味がする。 (次回は松本若菜)